春
被爆後の六十年を生き抜いた壮絶なあなたが あっけなく逝く
おばあちゃんばいばい何もわからぬ子が言われるままに花投げ入れる
靴に穴があいてることを思い出す冬の雨泣きたいほど冷たい
兵の日のことは語らず伯父も逝く 昭和の終わりの氷雨もはるか
なつかしいひとたちにあう あいたいかあいたくなかったかわからない
裁判所の吹きっさらし 原告側 被告側 時間差で煙草吸う
遺族の意見陳述を聴く心からの叫びとうわずってしまう心と
あざわらう声はどこから いまわたしは瞋りの糸にからまりやすく
犯罪におそらく人格はなくて底なしのむなしさに響かせる声
めぐりくる春ごとさくら咲くだろうさくら焚書の灰のごとく降る
「未来」2008年6月号
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